この記事は 2023/12/15 に App Store でリリースされた iOS 対応モバイルゲーム「もの切り侍」の(事後の)開発ログのうち「企画」に関する記録である。

「もの切り侍」は下の App Store のバナーから、無料でダウンロードできるので、興味があればぜひ遊んでみてほしい。



ゲームのおおまかな仕様を決める

まずは、これから開発するゲームの仕様をおおまかに決めるところからスタートした。

特定のプラットフォームで全世界に向けて配信することはあらかじめ心に決めていた。世界へ配信するとなると、中途半端な完成度では承認してもらえないだろう。承認してもらうには、一定水準以上のクオリティが求められるはずだ。それを一人でやり遂げなければならない。となると、ゲームのボリュームは小さくおさえなければならない。ボリュームの小さなゲームといえば、カジュアルゲームか。カジュアルゲームにとって大事な要素は、なんといってもあらゆる手軽さだろう。それを最大限発揮できるのは、おそらくモバイルゲームのはずだ。誰もが常に持ち歩くほど小さく、画面自体が入力装置になっているデバイスにゲームを乗せられるのだから、もはや物理的な手軽さで他にかなうプラットフォームはないだろう。

私は昔からRPGが大好きだ。当然自分でも感動的なストーリーと爽快なバトルシステムを搭載したRPGなんて作ってみたいと考えてしまうのだが、ひとまずここは地に足をつけよう。RPGはカジュアルの対局にあるジャンルといっても過言ではない。カジュアルゲームには正直、あまり馴染みがなかった。しかし、百聞は一見に如かずだ。自分のスマホにいくつかカジュアルゲームをダウンロードしてみた。そして、プレイしてみたらこれがかなり結構ハマるのだ。意図的に中毒性を注入しているんじゃないかと思う。最近では「ハイパーカジュアル」というジャンルが確立していて、どうやら、そのようなゲームを好んでプレイする人も少なくないようだ。「カジュアルゲーム、うん、悪くない」と納得し、初のモバイルゲーム開発は、ジャンルをカジュアルゲームと定めてスタートした。

カジュアルゲームに求められる全体的な手軽さとはなんだろうかと、必要な要素をリストアップしてみた。以下のとおりだ。

  • 直感的な遊び
  • シンプルな操作
  • 心地良いプレイ体験
  • リトライの早さ
  • 開始と終了の手軽さ

これらのポイントを押さえれば、カジュアルゲームとしての体験は成立するのではないかと考えた。ここからブレないように注意しながら開発を進めていった。



直感的な遊び

ジャンルが決まったので、次は具体的なゲームの内容を考えた。頭をあまり使わなくてよい、直感的でいい感じの遊びはないだろうか、と思い巡らせた。幼い頃、私は兄弟や友人と暇を潰すように、地面に落ちている木の枝を拾って、ある遊びをしたのをふと思い出した。その遊びは以下のようなルールだった。

  1. 自分は開いた手を握手する時のように前に出して構える
  2. 相手がその少し上から鉛筆や木の枝などの細い棒を不意に落とす
  3. 落とされた棒をうまく掴めたら成功

Child Play

直感的でシンプルながら、集中力を要し、反射神経が問われ、失敗してもリトライしたくなり、成功した時はなんとも嬉しい気持ちになる。これは良い。これをモバイルゲームに落とし込むことに決めた。具体的には、以下のように、少し遊びのルールを変えてモバイルゲームへ適用することにした。

  1. プレイヤーキャラクターを画面下部に配置する。
  2. オブジェクトを画面上部に配置する。
  3. それぞれに当たり判定エリアを設定する。
  4. 画面上部からオブジェクトを落とす。
  5. 落ちてきたオブジェクトの当たり判定エリアが、プレイヤーキャラクターの当たり判定エリアに重なった瞬間のみ当たり判定を有効にする。
  6. 当たり判定が有効になっている瞬間に、特定の画面操作をすると成功、そうでなければ失敗と判定する。

Play Image 1

これで直感的なプレイが実現できそうな感触が得られた。次に「シンプルな操作」について詰めていった。



シンプルな操作

モバイルゲームは物理ボタンがないので、むしろ操作を複雑にする方が難しい。物理ボタンがないからといって、ボタンによる操作を実現するために画面に仮想ボタンを配置することは避けた。プレイ画面上の仮想ボタンは、押している感触がないので、指がボタンからずれても気づけない。そうすると「押したはずなのに!」というネガティブなユーザー体験が発生するかもしれない。そういった事態は避けたかったので、今回作るゲームの基本操作では、ほぼ全画面で入力を受け付けるようにし、操作ジェスチャーもタッチとリリースのみとした。

次に、先に決めておいたゲームの基本ルールに、タッチ&リリース操作をあてはめていく。まず画面操作は一回だけ有効にする必要があるので、オブジェクトの落下開始と同時に入力を受け付け、一度入力するとそのあとの入力は無効にする仕様とした。

タッチ操作とリリース操作では、後者のほうがプレイヤーの入力した感覚とスマートフォンの入力処理とのラグが小さいはずだ。そのため、当たり判定が有効な間にリリース操作をすると成功と判定される仕様とした。

プレイヤーキャラクターが画面下部でオブジェクトが落ちてくるのを待ち構えるスタイルの場合、当たり判定が有効になるタイミングが毎回同じになってしまって、面白くなさそうだ。そこで、タッチ操作でプレイヤーキャラクターをジャンプさせることにした。タッチをキープしている間は一定の高さまでプレイヤーキャラクターが上昇する仕組みだ。これにより、リリース前のタッチ操作を無駄にせずに済むので、一石二鳥だ。

Play Image 1



心地良いプレイ体験

成功した時の気持ちよさは、ゲームに必要な要素だと思う。気持ちよさを表現するために色々と考えた結果、以下のようなマンガやアニメでよく使われる典型的な表現を取り入れてみることにした。

接近戦で戦っている二者が双方ともに、最後の一撃として、空中で同時に必殺技を繰り出しながらすれ違い、お互いに着地した直後、「どっちがやられた?!」とドキドキする間があり(場合によっては捨てゼリフがあり)、時間差で負けた方が血が吹き出したり、切り裂かれたり、爆発したりして倒される。

この表現のために、当初はプレイヤーキャラクターを剣士、オブジェクトをモンスターにしようと考えたが、ただ落ちてくるだけのオブジェクトをモンスターにすると、何も攻撃などしてこない見せかけだけのモンスターのできあがりだ。それだとプレイヤーの期待値を満たせなくなりそうな気がする。ならば単純に、モノを落とせば、プレイヤーの期待値を下手に上げすぎずに済むだろう。上述のアニメ表現とは少し違ってしまうが、グロテスクな印象がなくなって、小さな子どもにも安心してプレイしてもらえそうだ。

ある切れ味の良い包丁の実演販売で、野菜を切ったあと、野菜が全く切れていないように見える、というのをウリにしていたのを思い出した。プレイヤーキャラクターを侍にして、切れ味の良い刀であらゆるモノを斬らせてはどうだろうか。ルパン三世の石川ゴエモンのようなイメージだ。

ゲームに成功すると、空中で侍が落ちてきたモノを切りつけ、双方地面に着地したあと、時間差でモノがパッと分裂する、というイメージが頭の中にできあがった。侍が刀を鞘に収めたときのカチャリという音をきっかけにモノが分裂すると、さらにいい感じではないか。これを心地よいプレイ体験として採用することにした。



リトライの早さ

ゲーム失敗からリトライ後に再度プレイヤーからの入力を受け付けるようになるまでの時間が、長くならないように気をつけるのがゲームを継続してもらうための肝となるはず。カジュアルゲームはその手軽さゆえに、少しでもテンポが悪いとプレイヤーがゲームから離脱してしまう恐れがあると考えたのだ。

リトライの早さとして、以下のゲームをお手本とすることにした。

  • Bacon – The Game (モバイルゲーム)
  • Celeste (PC/コンソールゲーム)

特にベーコンのゲームは、カジュアルゲームとして多くの学びがあった。中でも、即リトライできて、諦めずに何度もプレイしたくなる感覚は非常に参考になった。



開始と終了の手軽さ

スマホゲームをプレイする環境は人それぞれだが、特に通勤通学中に利用する公共交通機関内でのプレイは、他のプラットフォームに比べて格段にその機会が多いはずだ。となると、目的の駅やバス停に到着したらすぐにゲームを終了できたり、乗り換えの前後でゲームを終了、開始をスムーズにできることは非常に重要だ。

プレイヤーが気にするのは、ゲームのデータだ。「いいところまで進めたけどセーブポイントがまだ先」とか「アプリを閉じて、また再開しようと思ったら、ずいぶん前のセーブデータがロードされた」などといった体験はできる限り回避したいものだ。

オートセーブ・オートロード機能を実装して、スマホ上はほとんどいつでもゲームを開始、終了できるようにすることにした。特に以下の点に注意して実装した。

  • セーブはスコアなどのセーブ対象のデータが変更された直後のタイミングに合わせて、こまめに保存させる
  • ロードはゲーム開始時やシーンの切り替え時など、プレイの邪魔にならないタイミングに、できるだけまとめてデータを読み込ませる


おわりに

ということで、以上のような企画をもとにゲーム開発を進めていった。とはいえ、一部は、開発をしながら調整した部分があるかもしれない。最初の企画いつでも自由にアップデートできるのも個人開発の強みである(やりすぎると永遠に終わらないが)。

私のように、会社員の傍ら趣味でゲームの個人開発をしている方であれば、そこまでしっかりした企画を練る必要はないと思う。ましてや企画書など誰かに見せるためのきっちりしたドキュメントは不要なので、ゲームのイメージをスケッチしたり、企画内容をノートにまとめるにしても、自分がわかればそれで良いのだ。

この開発ログがどなたかのゲーム開発の一助になれば幸いだ。



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